香りと記憶
「今週のお題 秋の空気 」
うちの息子はグニャグニャの赤ん坊だった
沐浴中、腕の上に乗せておくとドロドロとお湯の中へ溶けていく
まるでスライム
ところが、ひとたび恐怖を覚えると棒のように突っ張る
おむつ替えのたびに、突っ張ったまま体を紫色にして泣き叫んだ
赤ちゃんは清潔なおむつに変えてあげると気持ちがよくて喜ぶ
なんて、どこの国の話?
おむつ替えも、服を着替えさせるのも苦痛でしかなかった
それでも、赤ん坊のおぼつかない動きは見ていて癒される
赤ん坊の伸ばした小さな手が、私の頬に触れた時の柔らかさ
濁りのない瞳に映りこむ景色
金木犀の香りが漂う季節になると
祭囃子に誘われ、二人で窓の外を眺めた日の記憶がよみがえる
苦しい、可愛い、苦しい、可愛い・・・・・・
シーソーが反対側に傾かなくてよかった
きっとどこのお母さんも、初めは危ういバランスの中で子育てしているんだろう
5歳でアスペルガーの診断を受けた息子も、今年、めでたく成人を迎えた
あの頃の可愛さなんて微塵も残ってはいないけど
無時之名馬ってことで